不眠症
不眠症
現代社会では不眠に悩む人は多く、成人の4人に1人とも言われています。
年齢とともに不眠の頻度は高まり、女性に多いとされています。
不眠の原因は大きく5つに分けられます。
①身体的不眠
痛み、痒み、咳、頻尿などの身体的苦痛によって生じます。
②生理的不眠
騒音、まぶしい光、不適切な室温や生活環境、時差ぼけなどの環境、習慣、学習によって生じます。
③心理的不眠
急性及び慢性のストレスや喪失体験、心的外傷体験により生じます。
④精神疾患関連不眠
すべての精神疾患と不安障害をはじめとする神経症性障害に関連した不眠。
うつ病や不安障害が不眠の原因であることが多いです。
⑤薬剤関連不眠
咳止め、ステロイドなどの薬物による不眠だけでなく、アルコールやカフェインなどの嗜好品の常用によっても不眠が生じます。
ここでは、生理的不眠に関して掘り下げたいと思います。生理的不眠は神経質で過敏な性格の人に多く見られます。
ストレスがあると生理的な緊張、興奮として現れ、不眠の要因となります。
寝室に入るだけで眠れないのではないかという連想が起こり、心配によって興奮して一層眠れなくなるという悪循環が起こります。
治療には薬物療法と非薬物療法があります。
非薬物療法
不眠の条件反射を消去すること、過緊張、過覚醒を緩和することが目的となります。
下記のような睡眠指導が有効とされています。
- 眠くなってから布団に入る(眠くなるまで布団に入らない)
- 寝床は眠るためだけに使う(寝床で本を読まない、寝床でスマホやテレビを見ない、寝床でものを食べたり考えごとをしない)
- 寝床に入ってから10分眠れないときは寝床を離れる(寝床を離れ、明るすぎない場所で、大きな音は聞かずに退屈な作業をして過ごす。時計は見ずに眠くなったら寝床に戻る)
- どんなに眠くても、朝起きる時間を一定にする
- なるべく昼寝をしない(長くとも30分までとする)
薬物療法
1900年代はバルビツール酸系睡眠薬が主に使用されていましたが、薬物依存を生じやすいこと、毒性が強く大量服用により呼吸麻痺を生じやすいことなどから現在は使用されていません。
このバルビツール酸系睡眠薬に関する情報が今もインターネット上に残っており、後述する現代の薬物も同様に危ない物だと誤解されている場合が多いと思われます。
1960年代にベンゾジアゼピン系睡眠薬が登場し、バルビツール酸睡眠薬と比べて安全性が高いことから、現在も広く使用されています。
作用時間によって分類することができ、超短時間作用型及び短時間作用型は作用発現が速く、入眠を促進します。また、作用時間が短いため、翌朝に効果を持ち越すことが少なく、日中の眠気や作業能力低下を起こす可能性が低いです。
しかし、急に服用を中止すると反跳性不眠といって以前よりも酷い不眠を起こすことがあるため、自己判断での中止は避けましょう。
中間型及び長時間作用型は作用時間が長いため、中途覚醒(夜中に何度も起きてしまう)や早朝覚醒(朝早くに起きてしまう)に対して効果的です。
しかし、起床後にも効果が残存してしまい、日中の眠気やふらつきが生じることがあるため注意が必要です。
2000年代になると非ベンゾジアゼピン系睡眠薬が登場し、ベンゾジアゼピン系睡眠薬と同様の睡眠効果を得られかつ転倒のリスクが少ないことから高齢者にも安全に使用することが出来るようになりました。
また、2010年代からはメラトニン受容体やオレキシン受容体に作用する薬物も登場し、以前よりもさらに安全に使用できる薬剤の選択肢が増えています。
さいごに
当院では丁寧にお話を聞く中で不眠の原因を判断し、適切なアドバイス及び治療を提案いたします。
どうぞお気軽にご相談ください。