認知症
概念
認知症とは「生後いったん正常に発達した種々の精神機能が慢性的に減退・消失することで日常生活・社会生活を営めない状態」と定義されています。
つまり、後天的原因により生じる点で、知的障害とは異なると言えます。
疫学
認知症の最大因子は加齢です。65歳以上の高齢者における有病率は10~15%程度とされています。
分類
アルツハイマー型認知症が約半数を占めます。
他にはレビー小体型認知症、脳血管性認知症、前頭側頭型認知症などがあります。
今回はアルツハイマー型認知症について記述したいと思います。
軽度認知機能障害(MCI)
現時点では正常でも認知症でもないですが、近い将来アルツハイマー型認知症へと進行する可能性が高い状態とされています。
アルツハイマー型認知症の症状
記憶障害、見当識障害などの中核症状と妄想、イライラ、うつなどの周辺症状(BPSD)に分けることができます。
記憶障害
昔のことは覚えていますが、つい数分前のことを忘れてしまいます。
物忘れが目立つようになると、同じことを何度も話したり聞いたりするようになります。
大切な約束を忘れたり、複雑なことは理解できなかったり間違えたりしますが、ご本人は物忘れについて深刻に心配することはありません。
進行すると、同じ食品を何度も購入し冷蔵庫内で腐らせてしまったり、ガス栓を閉め忘れたり、鍋に火をかけたまま忘れて外出したりすることもあります。
見当識障害
時間、場所、人物が分からなくなります。自分の年齢が分からなかったり、外出先で迷子になり自宅へ帰れなくなります。
進行すると、家族や知人の名前や顔が分からなくなる患者さんもおられます。
妄想
物をしまった場所を忘れて盗られたといって騒ぐ「もの盗られ妄想」、食事をしたことを忘れて家人が自分に食べさせてくれないという「被害妄想」などがあります。
アルツハイマー型認知症の経過
記憶障害と見当識障害がまず出現し、数年単位でゆっくりと進行します。
次第にもの盗られ妄想や被害妄想が出現し、性格が攻撃的となり、些細なことでイライラしたり興奮するようになります。
また、昼夜のリズムが逆転したり、徘徊を繰り返すようになり、家庭での介護が困難となっていきます。
アルツハイマー型認知症の治療
アルツハイマー型認知症ではコリン作動性細胞が脱落することから、アセチルコリンの機能を増強する薬が有効とされています。
ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチンの4剤が認可され使用可能です。
また、妄想、イライラ、不眠に対して、それぞれ抗精神病薬、気分安定薬、睡眠薬を処方することがあります。
ご高齢の患者さんは副作用も出やすいですので、なるべく安全なものを少量から使用し、漢方薬を併用することもあります。
薬物療法以外にも介護保険を申請し介護保険サービスの利用をすすめたり、介護されているご家族のケアも必要です。
高血圧や糖尿病など身体疾患の悪化が原因で認知症が進行することも多いですので、生活習慣の改善や服薬管理、日中の活動の場を作るなど環境調整も重要となります。
さいごに
当院は「患者さんの一助となれるようしっかりと丁寧に話を聞き、患者さまやご家族さまの目線に立って解決方法を一緒に考えられる、安心を提供できるクリニックでありたい」との理念を掲げております。
認知症はつい最近のことを忘れてしまう記憶障害、日付や場所が分からなくなる見当識障害が出現し、日常生活に支障をきたす病気です。
進行すると被害的な妄想が出現したり、怒りっぽい性格に変化していくこともあります。
進行を遅らせたり、穏やかに過ごせるようお薬を処方することが出来ます。
また、ご家族の負担を減らすようサポートすることが出来ますので、ご相談ください。