アルツハイマー型認知症の新規治療薬「レカネマブ(商品名レケンビ)」について
アルツハイマー型認知症の新しい治療薬についてニュースなどで耳にされた方も多いと思います。
今回は『アルツハイマー型認知症の新規治療薬「レカネマブ(商品名レケンビ)」について』をまとめてみました。
他の認知症や精神疾患については他ブログ記事をご覧ください。
分からないことやお聞きになりたいことがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。
皆さまの健康へのお手伝いが出来るよう、丁寧な診察を心掛けてまいります。
① 概要
アメリカのバイオジェン社と日本のエーザイ社が共同開発した新薬「レカネマブ(商品名レケンビ)」が令和5年9月25日に日本で承認されました。「レカネマブ(商品名レケンビ)」は、アミロイドベータの可溶性および不溶性凝集体に対するヒト化IgG1モノクローナル抗体です。アルツハイマー型認知症の原因の一つとされているアミロイドベータに選択的に結合し除去することで、アルツハイマー型認知症の進行を抑制し、認知機能と日常生活機能の低下を遅らせることが証明され、今回の承認に至りました。
② 認知症とは
◇認知症とは「生後いったん正常に発達した種々の精神機能が慢性的に減退・消失することで日常生活・社会生活を営めない状態」と定義されています。つまり、後天的原因により生じる点で、知的障害とは異なると言えます。
◇認知症の最大因子は加齢です。65歳以上の高齢者における有病率は10~15%程度とされています。
◇アルツハイマー型認知症が約半数を占めます。他にはレビー小体型認知症、脳血管性認知症、前頭側頭型認知症などがあります。
◇軽度認知機能障害(MCI)とは現時点では正常でも認知症でもないですが、近い将来アルツハイマー型認知症へと進行する可能性が高い状態とされています。
③ アルツハイマー型認知症について
記憶障害と見当識障害がまず出現し、数年単位でゆっくりと進行します。次第にもの盗られ妄想や被害妄想が出現し、性格が攻撃的となり、些細なことでイライラしたり興奮するようになります。また、昼夜のリズムが逆転したり、徘徊を繰り返すようになり、家庭での介護が困難となっていきます。
④ アルツハイマー型認知症の治療
アルツハイマー型認知症ではコリン作動性細胞が脱落することから、アセチルコリンの機能を増強する薬が有効とされています。ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチンの4剤が認可され使用可能です。また、妄想、イライラ、不眠に対して、それぞれ抗精神病薬、気分安定薬、睡眠薬を処方することがあります。ご高齢の患者さんは副作用も出やすいですので、なるべく安全なものを少量から使用し、漢方薬を併用することもあります。
薬物療法以外にも介護保険を申請し介護保険サービスの利用をすすめたり、介護されているご家族のケアも必要です。高血圧や糖尿病など身体疾患の悪化が原因で認知症が進行することも多いですので、生活習慣の改善や服薬管理、日中の活動の場を作るなど環境調整も重要となります。
⑤ レカネマブ(商品名レケンビ)について
従来の4剤とは作用機序が異なり、原因の一つとされているアミロイドベータに選択的に結合し除去することで、アルツハイマー型認知症の進行を抑制します。今回行われた治験では偽薬と比較し、症状の悪化が27%抑制されました。レカネマブ(商品名レケンビ)の治療対象は早期のアルツハイマー型認知症及び軽度認知機能障害(MCI)になります。アミロイドが体内に蓄積していることを確認するために、PET検査や髄液検査を行い、治療対象かどうか判断されます。投薬開始後も重篤な副作用として脳出血があるため、慎重な経過観察が必要です。また、薬価の問題も議論されています。レカネマブ(商品名レケンビ)は生物学的製剤に分類される薬剤であり、非常に高価になると予想されます。この薬剤の開発及び承認がアルツハイマー型認知症治療の転換点となることが期待されています。
1)modern clinical psychiatry 12th edition
2)standard textbook 5th edition
3) https://www.eisai.co.jp/news/2023/news202359.html