パニック障害
『パニック障害について』
急に強い恐怖感が高まり、動悸、息苦しさ、吐き気、震え、めまい、発汗などの症状を繰り返すことに悩み、当院を受診していただく方が沢山おられますので、皆様の一助となれるよう『パニック障害』について記したいと思います。
- パニック障害とは
理由なく特別な状況や環境に限定されず、突然に動悸、息苦しさ、吐き気、眩暈などのパニック発作が繰り返し起こり、そのために様々な障害が生じる疾患です。
パニック発作は他の精神疾患でも生じますが、パニック障害では前兆なく突然にパニック発作が繰り返し生じるのが特徴的です。
日本人では動悸、頻脈、呼吸促進が最も多く、めまい感、気が遠くなる感じ、ふらつき、死の恐怖がついで多いとされています。
パニック障害は女性に多く、特に20歳代で発症することが典型的な疾患です。
- パニック障害の症状
◇パニック発作
パニック発作とは、下記症状のうちいくつかが突然に発現し、10分以内にその頂点に達するものです。
動悸、心悸亢進、心拍数の増加、身震いまたは震え、息切れ感または息苦しさ、窒息感、胸痛または胸部不快感、嘔気または腹部不快感、めまい感、ふらつく感じ、頭が軽くなる感じ、または気が遠くなる感じ、現実でない感じ、自分自身から離れている感じ、コントロールを失うことに対する、または気が狂うことに対する恐怖、死ぬことに対する恐怖、異常感覚、冷感または熱感
◇過呼吸症候群
パニック発作の際の呼吸促進のために過呼吸が起こり、過呼吸の結果、二次的に四肢末端のしびれ感、冷感、苦悶感などが生じることがあり、これを過呼吸症候群といいます。
◇予期不安
再びパニック発作が起こるのではないかという持続性の恐れを抱くようになり、これを予期不安といいます。予期不安がほとんど1日中頭から離れず、患者さんの本来の行動が制限されてしまうこともあります。
◇広場恐怖
身体症状を伴う限定発作から始まり、次第に多くの身体症状と強い不安・恐怖を伴う定型的なパニック発作を繰り返すようになります。
この時期に症状の原因が身体疾患であると考えて身体科の病院を受診される患者さんもおられます。
その後、特定の状況下でパニック発作が起こるとその限定された状況を回避するようになり、その特定の状況に対する恐怖を広場恐怖といいます。
さらに進行すると広範な状況に対して回避するようになり、生活活動の範囲が狭まり、自宅から一歩も出られなくなったり、うつ状態に陥ってしまう患者さんもおられます。
- パニック障害の診断
DSM-5では下記の診断基準が示されています。
A.繰り返される予期しないパニック発作。パニック発作とは、突然、激しい恐怖または強烈な不快感の高まりが数分以内でピークに達し、その時間内に以下の症状のうち4つ以上が起こる。
(1)動悸、心悸亢進、または心拍数の増加
(2)発汗
(3)身震いまたは震え
(4)息切れ感または息苦しさ
(5)窒息感
(6)胸痛または胸部の不快感
(7)嘔気または腹部の不快感
(8)めまい感、ふらつく感じ、頭が軽くなる感じ、または気が遠くなる感じ
(9)寒気または熱感
(10)異常感覚(感覚麻痺またはうずき感)
(11)現実感消失(現実ではない感じ)または離人感(自分自身から離脱している)
(12)抑制力を失うまたはどうかなってしまうことに対する恐怖
(13)死ぬことに対する恐怖
B.発作のうち少なくとも1つは、以下に述べる1つまたは両者が1か月以上続いている。
(1)さらなるパニック発作またはその結果について持続的な懸念または心配(例:抑制力を失う、心臓発作が起こる、どうかなってしまう)
(2)発作に関連した行動の意味のある不適応的変化(例:運動や不慣れな状況を回避するといった、パニック発作を避けるような行動)
- パニック障害の治療
パニック障害はアルコールやニコチン摂取、睡眠不足などで悪化することが知られていますので、まずは生活習慣の改善を図ります。必要であれば睡眠薬を処方することもあります。
また、認知行動療法や自律訓練法で改善することもあります。
パニック発作や予期不安を改善するためには薬物療法も有効です。
薬物療法としての第一選択薬はSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)です。抗うつ薬として処方されることも多い薬で、即効性はありませんが、効き始めると長く効果が期待できます。
また、不安感が強い場合は即効性のある抗不安薬を一時的に併用することもあります。
一般的には慢性的な経過をたどりますが、適切な治療を受けることにより症状が軽減し、生活がひどく妨げられることはなくなる方も多いです。
- さいごに
当院は「患者さんの一助となれるようしっかりと丁寧に話を聞き、患者さまやご家族さまの目線に立って解決方法を一緒に考えられる、安心を提供できるクリニックでありたい」との理念を掲げております。
パニック障害は急に強い恐怖感が高まり、動悸、息苦しさ、吐き気、震え、めまい、発汗などのパニック発作を繰り返す病気です。発作は特定の状況で生じることも多く、外出が困難となるなど日常生活に支障をきたす方もおられます。発作を予防するための精神療法やお薬での治療で改善することがありますので、お気軽にご相談ください。