抗精神病薬の作用と副作用
お薬の服用に関して不安を感じられる方は沢山おられると思います。
当院では丁寧にお話を聞く中で患者様と一緒に解決方法を考えていきます。
十分な説明をした上で患者様が希望された場合にはお薬を処方することもあります。
今回は『抗精神病薬の作用と副作用』に関してまとめてみました。
分からないことやお聞きになりたいことがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。
皆さまの健康へのお手伝いが出来るよう、丁寧な診察を心掛けてまいります。
抗精神病薬の作用
①幻聴、妄想などの陽性症状を改善する抗精神病作用
②感情や意欲の障害などの陰性症状を改善する精神賦活作用
③不安、不眠、興奮、衝動性を和らげ、気持ちを落ち着かせる鎮静催眠作用
抗精神病薬は、これら3つの効果を併せ持っており、それぞれに特徴があります。
このため、医師は患者さんの症状、既往歴など様々な条件を考慮し一人一人にあった薬の種類や用量を決定します。
なお、薬の効き方には患者さんごとに個人差があるため、薬を飲み始めてからでも、効果や副作用などをチェックしながら、患者さんにちょうどよい種類と用量の調節を行います。
このため、もし患者さんが勝手に服用を止めていたりすると、その患者さんにあった薬の種類や用量の判断ができません。
ここでも患者さんご自身も治療に参加し、納得して服用するというアドヒアランスの概念をもって実践することが重要となります。
④抗精神病薬の再発予防効果
抗精神病薬は精神症状の改善効果ばかりでなく、再発を予防する効果があります。
抗精神病薬による治療で幻覚、妄想などの症状が一旦改善しても服薬を継続しないと、数年で60~80%の患者さんが再発してしまうことが報告されています。
しかし、抗精神病薬を継続服薬すると、再発率が減少します。
このように、症状が落ち着いた後も継続して服薬する(維持療法)ことで、再発が予防できることを、抗精神病薬の「再発予防効果」といいます。
抗精神病薬の副作用
抗精神病薬の副作用はアドヒアランスの低下を招く大きな原因の一つです。
副作用をおそれるあまり、薬物療法を中断するということは、誤った対処法になります。
ここにお知らせするように、あらかじめ、どんな副作用があるかについて正しく知り、自分だけで判断せずに、心配な点は医師に遠慮なく相談してください。
①錐体外路症状
アカシジア
そわそわしてじっとしていられない、足踏みをしたくなる、手足がむずむずするなど
パーキンソン症状
体がこわばって動きが悪くなる、手がふるえる、よだれがでる、呂律が回らない
ジストニア
筋肉の一部がひきつる、目が上を向くなど
このような症状が現れた場合には、副作用を軽減する抗パーキンソン薬を併用する、抗精神病薬を減量する、これらの副作用が少ない他の抗精神病薬へ切り替えるなどで改善します。
②抗精神病薬の随伴的な副作用
眠気、だるさ、立ち眩み、口渇、便秘などがあります。
抗精神病薬の種類や用量を調整することで改善できる場合がありますので、ご相談ください。
③ホルモン系への作用による副作用
高プロラクチン血症によって、無月経、乳房がはったり乳汁が分泌されたりする、性欲が減退する、勃起不全になるなどが起こることがあります。
性生活は人間らしい社会生活を送るためにはとても重要な要素ですので、我慢したり恥ずかしがったりせずに医師にご相談ください。
これらの副作用が少ない薬への切り替えや用量の調節により改善することがあります。
④体重増加、耐糖能異常、脂質異常症
体重増加
抗精神病薬の中には、服薬を始めると食欲が増加する場合があります。
体重のコントロールのため、食事や運動など、日常生活の過ごし方に気を付け、もし短期間で太ってしまった場合には医師に相談しましょう。
体重増加の少ない抗精神病薬への切り替えで改善が期待できます。
耐糖能異常
オランザピン、クエチアピンは糖尿病の患者さんや糖尿病の既往のある患者さんには使うことが出来ません。
事前に糖尿病の有無をお知らせください。
また、糖尿病の診断のない方でものどが異常に渇く、たくさん水分をとるようになった、尿の量・回数が多いなどの糖尿病による高血糖が疑われますので、血液検査が必要です。
脂質異常症
血清脂質が上昇する可能性もあります。
統合失調症の患者さんは喫煙、肥満、糖尿病といった危険因子をすでにもっている場合がありますので、特に注意が必要です。
定期的に体重測定、血液検査を受けることで、糖尿病、脂質異常症の予防、早期発見、早期治療を心掛けましょう。