月経前不快気分症(Premenstrual dysphoric disorder:PMDD)
月経前にからだの不調を感じられる方は沢山おられると思います。当院では丁寧にお話を聞く中で患者様と一緒に解決方法を考えていきます。お薬以外の治療方法もありますし、十分な説明をした上で患者様が希望された場合にはお薬を処方することもあります。
今回は『月経前不快気分症』に関してまとめてみました。
分からないことやお聞きになりたいことがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。
皆さまの健康へのお手伝いが出来るよう、丁寧な診察を心掛けてまいります。
◎月経前症候群(premenstrual syndrome :PMS)
生理周期の5日前に、抑うつ・イライラ・不安などの感情症状、あるいは、乳房の張りや腹部の違和感、むくみなどの身体症状のいずれかが出現します。
抑うつ気分、苛立ちなどの精神症状がより重篤なものは下記PMDDと診断します。
◎月経前不快気分症(Premenstrual dysphoric disorder:PMDD)
①概要
PMDDではない他の女性と同様の質の高い生活ができますが、月経前の数日から2週間にわたり、重篤な精神症状が出現することにより、仕事、学校、家庭などでの日常生活や人間関係に大きな支障をきたします。これらのPMDDの症状は月経が始まるとともに、すべてが速やかに改善し、月経の後の1週間はほぼ完全に症状が消失していることが特徴的です。そして、次の月経前にも同様のPMDDの諸症状が出現します。
②疫学
PMDDの発病時期はおおむね20歳代で、未治療の場合は妊娠中や授乳中を除いて閉経まで、月経の前毎に症状が繰り返し出現します。生殖可能年齢女性の3~8%に認められるとされています。
③症状
精神症状
抑うつや不安などが問題となります。不安は強い緊張感やイライラ感の自覚という形で出現することも多いです。感情面では、情緒が著しく不安定になり、怒りっぽくなったり、感情のコントロールができないと感じます。集中力の低下、気力の低下、易疲労感から社会生活上も能率が低下して仕事や家事ができなくなることもあります。
身体症状
よく認められる症状は過眠と過食です。また、乳房の疼痛や膨満感、下腹部の疼痛や膨満感、便秘や下痢、浮腫などが認められることもあります。
④診断基準
A)ほとんどの月経周期において、月経開始前最終週に少なくとも5つの症状が認められ、月経開始数日以内に軽快し始め、月経終了後の週には最小限になるか消失する。
B)以下の症状のうち、1つまたはそれ以上が存在する。
- 著しい感情の不安定性
- 著しいいらだたしさ、怒り、または対人関係の摩擦の増加
- 著ししい抑うつ気分、絶望感、または自己批判的思考
- 著しい不安、緊張、いらだっているという感覚
C)さらに、以下の症状のうち1つ(またはそれ以上)が存在し、基準Bと合わせると、症状は5つ以上になる。
- 通常の活動(例:仕事、学校、友人、興味)における興味の減退
- 集中困難の自覚
- 倦怠感、易疲労性、また気力の著しい欠如
- 過眠または不眠
- 食欲の著しい変化、過食、または特定の食物への渇望
- 圧倒される、または制御不能という感じ
- 乳房の圧痛または腫脹、関節痛または筋肉痛、膨らんでいる感覚、体重増加
⑤治療
薬物治療ガイドラインによると、エビデンスの豊富さと安全性により、第一選択薬は選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)のうちいずれか1剤による間欠療法(黄体期のみの服用)となります。状態によっては継続内服することもあります。
第二選択薬もSSRI(第一選択薬として選択しなかったもの)とされています。
また、不安に対して抗不安薬を使用したり、諸症状に漢方薬が効果を示すこともあります。
The journal of the japan medical association