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社交不安障害

[2024.04.10]

『社交不安障害について』

 

人前で注目される際に緊張感が高まり動悸や息苦しさを感じる、あまり親しくない人との食事の際に緊張感が高まり吐き気を感じるなどの症状で悩み、当院を受診していただく方が沢山おられますので、皆様の一助となれるよう『社交不安障害』について記したいと思います。

 

  • 社交不安障害とは

社交不安障害とは、人から注目されるような場面や状況に対して強い不安や恐怖を感じる疾患です。その不安や恐怖が大きくなり、学校生活や仕事など社会生活に支障を来します。

日本では従来から「対人恐怖症」として注目されてきました。

海外で注目されていなかったのは、恥という日本文化の特性に結びついた日本人特有のものと考えられていたからです。

1980年頃からアメリカを中心に調査が行われ、社交恐怖は日本やアジアだけのものではなく、西欧人にもかなりの頻度で存在することが分かっています。

 

  • 社交不安障害の症状

・人前に出ると緊張しすぎて思うように話ができない

・人前で字が書けない

・頭の中が真っ白になってどうしたらいいのか分からない

・よく知らない人との面談や会食などの場面において、恥ずかしい思いをするのではないかと強い恐怖、苦痛を感じる

このような場面では不安症状が生じ、顔のこわばり、ふるえ、動悸、発汗、吐き気、尿意頻回、赤面などがみられます。

また、そういった自分の言動、表情、視線などによって他人に変に思われたり、軽蔑されたり、悪く思われたりするのではないかと、恐怖している対人場面や社交的状況を回避しようとします。

このようなことのため、毎日の生活や仕事、学業、他者との関係に支障が生じます。

通常は、ごく身近な人の前では不安は起こらないとされています。

社交恐怖には赤面恐怖、視線恐怖などの亜型もあります。視線恐怖には目の前にいる人の眼が自分を視ていることが気になるものと、自分の視線が相手を心ならずも見てしまい、相手に不快感を与えるのではないかと悩むもの(自己視線恐怖症)があります。

 

  • 社交不安障害の診断基準

DSM-5では下記の診断基準が示されています。

A.他者の注視を浴びる可能性のある1つ以上の社交場面に対する、著しい恐怖または不安。例として、社交的なやり取り(例:雑談すること、よく知らない人に会うこと)、見られること(例:食べたり飲んだりすること)、他者の前で何らかの動作をすること(例:談話をすること)が含まれる。

注:子どもの場合、その不安は成人との交流だけでなく、仲間たちとの状況でも起きるものでなければならない。

B.その人は、ある振る舞いをするか、または不安症状を見せることが、否定的な評価を受けることになると恐れている(すなわち、恥をかいたり恥ずかしい思いをするだろう、拒絶されたり、他者の迷惑になるだろう)。

C.その社交的状況はほとんど常に恐怖または不安を誘発する。

注:子どもの場合、泣く、かんしゃく、凍りつく、まといつく、縮み上がる、または、社交的状況で話せないという形で、その恐怖または不安が表現されることがある。

D.その社交的状況は回避され、または、強い恐怖または不安を感じながら耐え忍ばれる。

E.その恐怖または不安は、その社交的状況がもたらす現実の危険や、その社会文化的背景に釣り合わない。

F.その恐怖、不安、または回避は持続的であり、典型的には6ヶ月以上続く。

G.その恐怖、不安、または回避は、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。

H.その恐怖、不安、または回避は、物質(例:乱用薬物、医薬品)または他の医学的疾患の生理学的作用によるものではない。

I.その恐怖、不安、または回避は、パニック症、醜形恐怖症、自閉スペクトラム症といった他の精神疾患の症状ではうまく説明されない。

J.他の医学的疾患(例:パーキンソン病、肥満、熱傷や負傷による醜形)が存在している場合、その恐怖、不安、または回避は、明らかに医学的疾患とは無関係または過剰である。

 

  • 社交不安障害の治療

10歳代半ばでの発症が多く、成人期には症状が軽快したり寛解に向かう患者さんもおられます。症状の強さは生活上のストレスに伴って変動するとされています。

治療としては薬物療法と認知行動療法があります。

薬物療法としてはSSRIという抗うつ薬を処方することが多く、即効性はありませんが、効き始めると長く効果が期待できます。

抗不安薬は即効性があり、恐怖が生じる特定の場面に対して事前に服用することで効果が期待できます。

また、動悸、ふるえ、発汗などの自律神経症状にはベータ遮断薬が有効な場合があります。

認知行動療法としては恐怖場面での不安のコントロール法を習得し、予期不安や回避行動を減少させるよう反復して訓練する方法があります。

 

  • さいごに

当院は「患者さんの一助となれるようしっかりと丁寧に話を聞き、患者さまやご家族さまの目線に立って解決方法を一緒に考えられる、安心を提供できるクリニックでありたい」との理念を掲げております。

社交不安障害は人から注目される、人と食事とするなどの社交場面において強い不安感が生じ、動悸、息苦しさ、吐き気などの症状が現れる病気です。

そういった症状に苦痛を感じ、社交場面を避けるなど日常生活に支障をきたします。

精神療法やお薬での治療で改善することがありますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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