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周産期メンタルヘルス

[2023.09.04]

妊娠中から出産後にかけて不安を感じられる方は沢山おられると思います。当院では丁寧にお話を聞く中で患者様と一緒に解決方法を考えていきます。お薬以外の治療方法もありますし、十分な説明をした上で患者様が希望された場合にはお薬を処方することもあります。
今回は『周産期メンタルヘルス』に関してまとめてみました。
分からないことやお聞きになりたいことがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。
皆さまの健康へのお手伝いが出来るよう、丁寧な診察を心掛けてまいります。

妊娠中から出産後にかけてストレスやストレスに伴う不調を感じることがあります。
妊婦さんやお母さんに心理的不調が出現することにより、育児や家族関係にも影響をきたすため、適切な対応が必要となります。

◎産後うつ病(周産期うつ病)

①概要・疫学

出産後にうつ状態となる病気ですが、妊娠中から発症することも多く、最近は周産期うつ病と呼ばれることもあります。有病率は妊娠期で7~13%、産褥期で10~15%とされ、産後うつ病の約50%が妊娠期にすでに抑うつ症状をもつと言われています。

②産後うつ病の臨床的特徴

  • 抑うつ症状だけでなく、不安症状が強いです。
  • 自己肯定感の低下や自責感を認め、罪業妄想(自分が他人に迷惑をかけているのではとの考え)を認めることがあります。
  • 致死性の高い自殺手段を取りやすいと言われています。
  • 具合が悪くても、他人に指摘されても精神科を受診しようとしません。

③病態生理

産後のさまざまな女性ホルモンの変動だけではなく、母親になることへの葛藤、育児への不安、夫婦間の葛藤などの心理的不安も影響します。リスク要因として精神科既往歴、ライフストレス、社会的関係性の脆弱さなどが指摘されています。
スクリーニングとして1987年にイギリスで開発されたエジンバラ産後うつ病自己評価表(Edinburg Postnatal Depression Scale:EPDS)が有名です。通常は産後2週間から4週間に母子保健行政機関にて実施されます。

④治療

  • 薬物療法
    選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)という抗うつ薬を使用します。授乳中の患者さんは母乳にお薬が移行しないか心配されますが、移行率はかなり低く、大きな問題の報告はありません。お母さんの健康はお子さんの成長にとても重要です。どうしても気になる患者さんには漢方薬を提案することもあります。
  • 精神療法
    状況を整理し、つらいという感情への向きあい方や対処法を一緒に考えていきます。つらいという感情に寄り添い、適切なアドバイスをします。


◎産褥期精神病(産後精神病)

出産後数週間のうちに、急な経過で激しい興奮状態を呈する精神疾患です。
おおよそ7割が産後1週間以内に発症し、しばしば精神科救急レベルの迅速な対応を必要とします。
症状は動揺性で、感情や情動面の激しい波がみられます。錯乱のような興奮状態をきたす場合や、躁状態やうつ状態が混在したような状態をきたす場合、さらに意識混濁をきたす「せん妄」のような状態になる場合があります。
鑑別疾患として脳炎や甲状腺疾患が挙げられます。
薬物治療として抗精神病薬や気分安定薬が使用され、短期間で改善することが多いです。
しかし、次回の産後再発率は50%と高く、注意が必要です。

the journal of the japan medical association

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