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強迫性障害

[2024.05.04]

『強迫性障害について』

戸締りをしたか何度も確認する、元栓を閉めたか何度も確認する、汚れてしまったと考え手洗いを何度も繰り返すなどの症状で悩み、当院を受診していただく方が沢山おられますので、皆様の一助となれるよう『強迫性障害』について記したいと思います。

 

①強迫性障害とは

強迫性障害とは、「強迫思考」とその強迫思考に対応しようとする「強迫行為」が生じる疾患です。

ある考えが自分の意思に反して何度も頭に浮かび、払いのけることができなくなる「強迫思考」と、ある行為をしないと気がすまなくなる「強迫行為」があらわれ、自分では不条理でつまらないことだと分かっていても、そのことが頭から離れない、分かっていながら何度も同じ確認を繰り返してしまうことで、日常生活に支障をきたします。

有病率は1~2%とされており、およそ100人に2人程度が強迫性障害を発症します。男女比に差はなく、発症平均年齢は20歳程度と比較的若年で、35歳以降で発症するのは比較的まれです。

また、パニック障害や社交不安障害などの他の不安障害やうつ病などとの併発もよくみられます。

 

②強迫性障害の症状

強迫思考、強迫行為が主な症状です。

◇強迫思考とは

・常同的な形で繰り返し患者の心に浮かぶ観念、表象あるいは衝動

・患者に苦悩をもたらすもの

・患者はその思考に抵抗し打ち消そうとするが成功しない

・本人の意思に反したものであるが、自分自身の思考であることが分かっているもの

とされています。

簡単に言いますと、自分でもバカバカしいと思う考えが意志に反して浮かんで、考えないようにしても自分の意志ではどうにもならない状態です。

 

◇強迫行為とは

・何度も繰り返される常同行為

・本来愉快なものではなく、役に立つ課題を達成するものでもない

・自分にとって有害な出来事やあるいは実際に起こりそうもない出来事を避けるために、すなわち強迫思考を排除するために行われる行為

とされています。例えば、ガス栓を締めたかどうかが気になって(強迫思考)、台所へ何回も立ち戻っては確認する(強迫行為)や戸締りを忘れたのではないかと気になって(強迫思考)、自宅まで戻って確かめないと気が済まない(強迫行為)などです。

強迫思考には、健常者もときに体験するような内容のものから、かなり奇異な内容のものまであります。

例えば、人前でわいせつな言葉を発しないか、いきなり相手を殴ったりしないか、自分が電車に飛び込みはしないかなどというものがあります。

また、強迫行為には電柱・敷石・窓など目についたものを数えないと気が済まない、なんでも理由が気になり理由を確かめないと気が済まない、歩行中に直角に曲がれないとまたやり直すなどの行為もあります。

こうした強迫症状のために患者さんは悩み、仕事や学業など生活が支障されているという特徴があります。

 

③強迫性障害の診断基準

DSM-5では以下の4つの項目が診断基準として示されています。

・強迫思考、強迫行為またはその両方が存在すること

・強迫思考または強迫行為によって時間を浪費し、日常生活や社会生活に支障をきたしていること

・その障害は乱用薬物や医薬品によるものではないこと

・他の精神疾患の症状では上手く説明できないこと

 

④強迫性障害の治療

治療としては薬物療法と認知行動療法があります。

薬物療法としての第一選択薬はSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)です。抗うつ薬として処方されることも多い薬で、即効性はありませんが、効き始めると長く効果が期待できます。SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)は、強迫性障害の原因の1つと考えられている脳内のセロトニン系の異常を調整する働きを持ちます。不安感が強い場合は即効性のある抗不安薬を一時的に併用することもあります。

 

認知行動療法としては暴露反応妨害法が多く用いられます。

これは不安を感じる場面にわざと自分を曝し(わざと汚いと思うものに触るなど)、そこで生活を妨害している行動を行わず(手を洗うことを我慢するなど)、それまで行っていた習慣的行動をしなくても安全であることを体験し、反復して訓練する方法です。

 

⑤さいごに

当院は「患者さんの一助となれるようしっかりと丁寧に話を聞き、患者さまやご家族さまの目線に立って解決方法を一緒に考えられる、安心を提供できるクリニックでありたい」との理念を掲げております。

強迫性障害は、戸締りや元栓が気になり何度も確認する、手洗いを何度も繰り返すなど、強迫思考や強迫行為のために日常生活や社会生活に支障をきたす疾患です。

精神療法やお薬での治療で改善することがありますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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