レビー小体型認知症
物忘れに悩まれる方、またはそのご家族は多くおられると思います。
今回は『レビー小体型認知症』に関してまとめてみました。
他の認知症や精神疾患については下記リンクよりご覧ください。
分からないことやお聞きになりたいことがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。
皆さまの健康へのお手伝いが出来るよう、丁寧な診察を心掛けてまいります。
レビー小体型認知症(DLB)
① 概説
認知症の中ではアルツハイマー型認知症についで2番めに多く、全体の20%程とされています。
Dementia with Levy bodiesの頭文字をとってDLBと表記されることもあります。
レビー小体の主成分はアルファシヌクレインという蛋白であり、それが線維化・凝集することによってレビー小体が形成されることが分かっていますが、その原因はまだ分かっていません。
② 症状・診断
必須症状
日常生活に支障をきたす進行性の認知機能低下が必須症状とされています。
初期にはアルツハイマー型認知症と比べて近時記憶の障害が軽く、進行とともに顕著となります。
また、注意・遂行機能障害が出現し、知的能力に比べて問題解決成績が不良なことがあります。
中核症状
認知の変動
認知機能の動揺は注意や覚醒レベルの変動を伴うもので、意識レベルの低下は比較的急速に起こり、数分から数時間、ときに数週続くこともあります。
周囲からの呼びかけによって意識レベルが上がると認知機能も一旦改善しますが、長続きせず、再び低下状態に戻ることが多いです。
幻視
初期から顕著にみられることが多く、幻視の内容は具体的でありありとした臨場感のあるものが繰り返されて現れます。
人物や小動物がみえることが一般的で、人物は一人のことも複数のこともあり、目を離すと消えます。
色彩があるものもあります。
小動物は蛇や虫が多く、患者さんは確信をもって家族に伝えます。
レム睡眠行動障害
睡眠には眠りの深いノンレム睡眠と眠りの浅いレム睡眠があります。
レム睡眠時には夢をみており、通常はレム睡眠中には体に力が入らないようになっています。
レム睡眠時に大きな声を出したり、眠ったまま手足を動かしたり歩いたりすることがレム睡眠行動障害の特徴です。
レビー小体型認知症の初期に多くみられ、異常行動は10分程度で治まることがほとんどです。
パーキンソン症状
動作がゆっくりになる、筋肉がこわばって動かしにくくなる、静止しようとしても手足が震えてしまう、体のバランスが悪くなるなどのパーキンソン症状がみられます。
支持的特徴
抗精神病薬に対する過敏性
幻視や妄想に対して抗精神病薬を少量使用しただけで過敏に反応し、嚥下障害やパーキンソニズムなどの副作用が出ることがあります。
高度の自律機能障害
急に立ち上がった時に血圧が低下する起立性低血圧や高度な便秘、尿失禁などがみられます。
指標的バイオマーカー
- SPECTまたはPETで示される基底核におけるドパミントランスポーターの取り込み低下
- MIBG心筋シンチグラフィでの取り込み低下
- 睡眠ポリグラフ検査による筋緊張の低下を伴わないレム睡眠の確認
これらの症状や指標の組み合わせを診断基準としています。
③ 治療
レビー小体型認知症ではアルツハイマー型認知症と同様にコリン作動性細胞が脱落することから、アセチルコリンの機能を増強する薬が有効とされています。
ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチンの4剤が認可され使用可能です。
アルツハイマー型認知症では抗精神病薬も使用しますが、上述のようにレビー小体型認知症の患者さんは過敏性をお持ちですので使用はなるべく控えます。
ご高齢の患者さんは副作用も出やすいですので、なるべく安全なものを少量から使用し、漢方薬を併用することもあります。
薬物療法以外にも介護保険を申請し介護保険サービスの利用をすすめたり、介護されているご家族のケアも必要です。
高血圧や糖尿病など身体疾患の悪化が原因で認知症が進行することも多いですので、生活習慣の改善や服薬管理、日中の活動の場を作るなど環境調整も重要となります。
④ さいごに
当院は「患者さんの一助となれるようしっかりと丁寧に話を聞き、患者さまやご家族さまの目線に立って解決方法を一緒に考えられる、安心を提供できるクリニックでありたい」との理念を掲げております。
認知症の進行を遅らせたり、穏やかに過ごせるようお薬を処方することが出来ます。
また、ご家族の負担を減らすようサポートすることが出来ますので、ご相談ください。
1)modern clinical psychiatry 12th edition
2)standard textbook 5th edition